太陽光発電所の土地の固定資産税~山林から雑種地になって税金が上がるの?~
固定資産税
土地上の太陽光発電所には原則として固定資産税がかかります。固定資産税は、土地の固定資産税と償却資産の固定資産税に分けられます。
- 土地の固定資産税
- 償却資産の固定資産税(いわゆる償却資産税)
その太陽光発電所の土地の固定資産税は間違っている(かも)
雑木林を開発して、太陽光発電所を建設した後に、土地の固定資産税が上昇してしまうことに違和感がありませんか?私はめっちゃ違和感あります。
今回はその違和感を取り除きましょう。
国税庁の法令解釈通達には以下の通り書いてあります。
第3節固定資産の取得価額等
第1款 固定資産の取得価額
(土地についてした防壁、石垣積み等の費用)
6-3-6 埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得価額に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得価額に算入しないで、構築物の取得価額とすることができる。
上水道又は下水道の工事に要した費用の額についても、同様とする。
(注) 専ら建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事に要した費用の額は、当該建物、構築物等の取得価額に算入する。
注意書きが重要です。つまり、原則として、土地の価値は「素地(原野・山林等)」+「造成費」であるものの、建物・構築物等のための造成費については、特別に当該建物、構築物等の取得価額に算入して償却資産として課税されるということです。
これは実際の運用上とても有効な考え方です。
土地の所有者(地主さん)の立場に立ってみると、土地を貸したはいいけれど、借主(発電事業者)が開発することで土地の固定資産税が急上昇してしまうと、地代収入で固定資産税を賄えなくなってしまうことが考えられます。しかもいくら上昇するのか予測できません。
要するに、原則論で土地に課税すると、地主さんの赤字(不測の損害)が見込まれるためトラブルが頻発してしまうのです。
しかし、上記の注意書きのおかげで、土地の価値のうち、「造成費」の部分を償却資産として発電事業者に課税負担させることで、地主さんの税負担が急上昇することを避けることができるはずです。国税庁さんのファインプレーですね!
- 土地の固定資産税:造成前の開発素地の評価額
- 償却資産税:EPCコスト+造成費
ところが、
それにもかかわらず、土地の固定資産税評価額を開発前の何倍にも上昇させている市町村があるのです。
コストアプローチの観点から考察すると、1つの造成費について、償却資産としても課税して、土地としても課税しているいわゆる「二重課税」状態になっている可能性があります。
↓こんなイメージです。
- 土地の固定資産税:造成前の開発素地の評価額+造成費(≒雑種地)
- 償却資産税:EPCコスト+造成費
FIT期間満了後にその土地の固定資産税を地主さんが払えますか?たぶん無理ですよ。
なので、土地については開発前の状態(雑木林であれば山林ベースの評価額)で課税すべきなのです。
土地の価値を高めた「造成費」については、設備やFIT(プレミアム)と共に償却(価値も減少)されていけばいいのです。
「造成費」を償却されない土地の価格に含めてはいけません。
市町村のいう「近傍類似の土地の評価...」というのは、マーケットアプローチの観点での評価方法ですが、その類似地の価値構成も造成後の土地であれば、当然「素地+造成費」なのです。
- 雑種地(素地+造成費) 事例A:3,000円/㎡
- 雑種地(素地+造成費) 事例B:5,000円/㎡
- 雑種地(素地+造成費) 事例B:4,000円/㎡
上記事例A~Cを比準して、対象地価格を例えば4,000円/㎡と求めると、その4,000円/㎡は『素地+造成費』の価値です。
そのままではおかしいですよね?
雑木林を開発した太陽光発電所の土地であれば、課税上は「造成費」を控除した「開発素地(雑木林)」に近い価値になるはずです。
市町村はこの辺を踏まえたうえで課税すべきですね。
そうでなければ、償却資産税に「造成費」を含める行為は明らかにおかしいです。
土地の固定資産税が太陽光発電所の開発後に数倍になってしまったそこのあなた!
申請したら土地の固定資産税が還付されるかもしれませんよ?
もし還付されたら教えてくださいね。
地元の特産品を待っています。