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直接還元法を不動産鑑定士が詳しく解説!~アパート・マンション編~

不動産を持っている方、買いたい方、売りたい方、はたまた融資したい方は、不動産の値段をどのように把握しているのでしょうか?

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世界に同じものが二つとない不動産ですが、お隣さんの売値と同じで大丈夫ですか?

仲介業者さんのいう値段でほんとに合っていますか?

 

不動産は、通常のモノや有価証券などと異なって用途や権利が複雑なので、価格の専門家として『不動産鑑定士』がいます。

私も保有している「不動産鑑定士」資格ですが、ひそかに文系最難関資格のひとつと言われており、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務となっています。

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不動産の鑑定評価は、不動産鑑定士にしかできないの??

 

もちろん答えはNoです。

不動産鑑定士でなくても評価できます。

(鑑定評価を商売にしてはダメですが)不動産鑑定士でなくとも価格査定することはできますし、不動産価格は時の経過や経済動向の影響を受けて常に変化していますので、大家さんや融資担当者は、定期的に査定すべきです。

 『賃貸アパート』や『賃貸マンション』の評価は特に簡単です。

 

そこで今回は、初心者向けに『賃貸マンション』の価格を査定する方法を伝授します。

良くわからないところは、数字を仮置きしておいて、サクサクっとゴールに向かいましょうね!!

評価額の前後5%は誤差ですよ!

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一棟マンションの評価方法

【モデルケース】
l  ワンルーム賃貸マンション(一棟)
l  土地の権利:所有権
l  築後5年が経過
l  延べ床面積1,000㎡程度
l  鉄筋コンクリート造(RC造)
l  容積充足率はほぼ100%:容積率の無駄が無い状態という意味

 

最有効使用を判定

いきなり何!?と思うかもしれませんが、最有効使用は、不動産の評価で一番大事な概念です。

最有効使用とは、不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用と定義されます。要するに、最適な使用方法のことです。

 

『建物及びその敷地』という不動産の最有効使用は、大きく3つに分けられます。

・賃貸マンションとして継続使用 ← 今回はこれ
・取り壊して更地化
・用途変更して使用

今回のモデルケースは、築5年の賃貸マンションなので、継続使用を最有効使用と判定します。

例えば、これが築40年となると取壊した方が価値が高くなる可能性がでてきますよね?

そうなると評価手法が大きく変わってきます。購入者層も変わってくるでしょう。

だから「最有効使用」の判定は大事なのです。

 

最有効使用の判断が難しいときは、それぞれを査定してみて、より高く査定された使用方法を「最有効使用」と判定します。

「取り壊して更地化」が最有効使用のときの不動産の価値は、『更地価格-取壊し費用』で求められます。

更地には、様々な使われ方が考えられる評価が難しい大規模地などもありますので、更地については、いずれまたゆっくり解説します。

 

継続使用することが最有効使用の場合の評価手法

ここは読み飛ばしもいいですが、鑑定評価の構造をご理解いただくために、あえて書きます。

投資用不動産の鑑定評価に最も多く用いられる評価手法は、収益還元法です。国際的にはincome approachと呼ばれるものです。

収益還元法は、直接還元法(Direct Capitalization Method)とDCF法(Discount Cash Flow Method)に大別されます。

 

賃料の将来予測、修繕費・資本的支出の計画、将来の固定資産税等を細かく設定できるDCF法の方が、評価を生業にしている専門家の間では優れているといわれています。

ただし!こと築浅の賃貸マンションに関して言えば、『直接還元法』でもDCF法とほぼ同様の結果が得られる上に、『直接還元法』は電卓でも計算できてしまうほど作りが単純なので、不動産会社や投資家の中では『直接還元法』の方が優れていると判断される方々も多いのです。

 

今回は、収益還元法の基礎として、直接還元法をマスターします。

 

直接還元法は、投資用”資産”の本質を表わした式です。

元本と果実の関係を表わしており、2つの要素がわかれば残りの要素を計算できます。不動産以外の金融商品などにも当てはまる便利な式ですので、一般教養として、是非記憶してください。 

直接還元法の公式

  【超重要】
 収益価格 = 純収益 ÷ 還元利回り 

 

【例題】
そこそこ安定的に収益(例えば年間100万円)を生み出す”資産”が、市場でその収益の20倍(2,000万円)程度で多数売買されていたら、その種類の”資産”の還元利回りは、概ね5%(100万円÷2,000万円)と推定されますよね? 

さて、上記の資産と同様にそこそこ安定的に年間180万円を生み出す”資産”があります。さてその価格はいくらでしょう?暗算で答えてください。
答えはこちら

  

直接還元法

直接還元法の査定作業は、年間収益から年間費用を引いて、年間純収益を求めることがメインとなります。 

 

基本的には1年を1期間とし、運営収益から運営費用を控除して運営純収益(NOI:Net Operating Income)を求めます。

さらに細かく求めると、運営純収益(NOI)に敷金の運用益を加算し、さらに資本的支出を控除して年間純収益(NCF:Net Cash Flow)を求めます。

通常、各項目は直近年の実額ではなく、過去の実績や事例等を参考に中長期的に期待できる数値を計上していきます。

  

具体的な収支項目は、以下のとおりです。 

運営収益

貸室賃料収入

対象不動産の全部又は貸室部分について賃貸又は運営委託をすることにより経常的に得られる収入(満室想定) 

  • 貸室賃料収入 = 賃貸可能面積 × 査定賃料単価 × 12ヶ月

 

共益費収入

対象不動産の維持管理・運営において経常的に要する費用(電気・水道・ガ ス・地域冷暖房熱源等に要する費用を含む)のうち、共用部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入(満室想定) 

  • 共益費収入 = 賃貸可能面積 × 査定共益費単価 × 12ヶ月

水道光熱費収入 

対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用のうち、貸室部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入( 満室想定) 

  • 水道光熱費収入 = 賃貸可能面積 × 水道光熱費収入単価0円 × 12ヶ月

駐車場収入 

対象不動産に附属する駐車場をテナント等に賃貸することによって得られる収入及び駐車場を時間貸しすることによって得られる収入 

  • 月極駐車場収入 = 駐車台数 × 1台あたり月額駐車料 × 12ヶ月 
  • 時間貸し駐車場収入 = 時間貸し駐車料収入の月額 × 12ヶ月 
  • バイク置場収入 = 駐車台数 × 1台あたり月額駐車料 × 12ヶ月 

その他収入

その他看板、アンテナ、自動販売機等の施設設置料、礼金・更新料等の返還を要しない一時金等の収入 

 

  •  礼金収入 = 月額賃料 × 礼金月数 × 入替率 
  •  更新料収入 = 月額賃料 × 更新料収入月数 × 更新係数 
  •  自動販売機収入 = ●●●●円 × 12ヶ月 

 
※平均入居期間は、単身者が中心なら4年、ファミリーが中心なら6年など※入替率と更新係数を簡易的に求めると、「1÷平均入居年」となります。

空室等損失

各収入について空室や入替期間等の発生予測に基づく減少分 

 

  • 賃料の空室等損失 = 賃料収入 × 空室率 
  •  共益費の空室等損失 = 共益費収入 × 空室率 
  •  水道光熱費収入の空室等損 = 水道光熱費収入 × 空室率 
  •  月極駐車場の空室等損失 = 月極駐車場収入 × 空室率 
  •  バイク置場収入の空室等損失 = バイク置場収入 × 空室率

※ほぼ満室で、入替え期間程度しか空室を想定しないときの貸室空室率は5%程度  

貸倒れ損失

  • 各収入について貸倒れの発生予測に基づく減少分

 ※敷金が取れている時は計上しません。

運営費用

維持管理費

建物・設備管理、保安警備、清掃等対象不動産の維持・管理のために経常的に要する費用

  • 維持管理費 = 賃貸可能面積 × 単価 × 12ヶ月

 

 ※大家自らが維持管理業務を行っていても、純粋な不動産投資家の立場にたち、外部委託することを想定して計上 します。

水道光熱費

対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用

  • 水道光熱費 = 賃貸可能面積 × 単価 × 12ヶ月 

修繕費 

対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の通常の維持管理のため、又は一部がき損した建物、設備等につきその原状を回復するために経常的に要する費用

 

建物再調達原価が坪あたり80万円だった場合

  • 修繕費=延床面積 × 単価(80万円/坪) × 料率(05%~2%) × 30%

※坪単価は仮置き数値

※築後5年程度なら、料率は0.5%~1.0%の間推測されます。

※料率は、大規模修繕が近づいていると高くなり、過ぎると低くなります。

プロパティマネジメ ントフィー(PMフィー)

対象不動産の賃貸等管理業務に係る経費

  • PMフィー = 年間賃料等収入 - 空室等損失 × 料率2%~4%

テナント募集費用等

新規テナントの募集に際して行われる仲介業務や広告宣伝等に要する費用、及びテナントの賃貸借契約の更新や再契約業務に要する費用等 

  •  新規募集費用 = 月額賃料 × 手数料月数1.5 × 入替率 
  • 更新費用 = 月額賃料 × 手数料月数0.5 × 更新係数 

※手数料:新規は1.0~1.5ヶ月分、更新は0.5ヶ月分程度が主流となっています。

※入替率と更新係数を簡易的に求めると、「1÷平均入居期間」となります。

※平均入居期間は、単身者が中心なら4年、ファミリーが中心なら6年など

公租公課

固定資産税(土地・建物・償却資産)、都市計画税(土地・建物) 

  • 土地の固定資産税・都市計画税 
  • 建物の固定資産税・都市計画税 
  • 償却資産の固定資産税

※通常は、直近年度の実額を計上します。  

損害保険料

対象不動産及び附属設備に係る火災保険、対象不動産の欠陥や管理上の事故による第三者等の損害を担保する賠償責任保険等の料金

  • 損害保険料 = 建物再調達原価 × 料率0.03%~0.1%


 ※地震保険が必要なエリアは別途計上が必要です。

その他費用

その他支払地代、道路占用使用料等の費用

  • その他費用 = 運営収益 × 料率0.3%~1.5%

運営純収益  

  • 運営純収益 = 運営収益 - 運営費用

一時金の運用益 

預り金的性格を有する保証金等の運用益

資本的支出(CAPEX)

対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該建物、設備等の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する支出 

  • 資本的支出=延床面積 × 単価(80万円/坪) × 料率(1%~3%) × 70%

※坪単価は仮置き数値

※築後5年程度なら、料率は0.5%~1.0%の間推測されます。

※料率は、大規模修繕が近づいていると高くなり、過ぎると低くなります。


純収益 (NCF) 

  • 純収益 = 運営純収益 + 一時金の運用益 - 資本的支出


還元利回り(CR) 

とりあえず、モデルケースのように築5年ほどのまともな賃貸マンションであれば、2019年3月現在、東京では4.5%、他の主要都市では5%~5.5%程度で大きく外さないと思います。 

収益価格

  •  収益価格 = 純収益(NCF) ÷ 還元利回り

 

これでとりあえず収益価格を求めることができました。

各収支項目を正確に計算していくことで、評価の精度を上げていくことができます。

 

各収支項目及び還元利回りについては、別の記事で詳細を説明する予定です。

お疲れ様でした!

 

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